Creator Stories

Bombay Sapphire Artist spotlight vol. 3
Fashion designer Kotoha

Photos: Kim Marcelo, Video: DIN Films, Words: Ichiro Yasui

台風が接近している中、屋外でファッションショーをしたことがある。服もモデルさんも雨でずぶ濡れ。スタッフ全員、大変な思いをしてファッションショーは終わった。その時に撮影したショーの写真を見返してハッとした。あんなにも降っていた雨と手掛けたスタイリングが見事なほどにマッチしていて驚いた。狙ってできないものもある。偶然をクリエイティブに吹き込むことの面白さを知った。いまなお心に残っている出来事。

祖母は洋裁店を営んでいた。だから物心つく頃から着る物に興味を持っている子供だった。服は自分で作れるもの。そんな環境の中、私は育っていく。

専門学校を卒業してすぐ、あるアパレル会社でアシスタントデザイナーとして働きはじめることに。でも、そこでは自分の力を発揮することができなかった。自分の力をアウトプットするその術すらわからなかった。そこで私はひとつの決心をする。えいっ。力強く一歩を踏み出した。いつかは自分のブランドを持つのだから一旦早いうちに始めてみよう。私は、自身のブランドを立ち上げた。

インスピレーションの源は何ですか?って質問をされることがある。でもこれといって特別な経験などなくて、毎日普通に暮らしている自分の生活の中での気づきや、こんなものがあったらいいなという思いに導かれて日々服を作っている。時に壁にぶつかることもある。そんな時はお笑いのライブに行って大笑いしたり、お酒をほどよく嗜なみながらラジオやYoutubeの時間に浸る。そうするとまた、前を向ける。

こんな毎日を経て私の服は世の中に羽ばたいていく。街で自分が企画したアイテムを着ている人を見るとちょっと嬉しい。そしてちょっと照れてしまう。他にも嬉しくて楽しくなる瞬間がある。コレクションができあがったとき、撮影準備のためにアトリエに一人篭り、自らがその服を着てスタイリングのイメージを膨らませる瞬間。いつも楽しくて仕方がない。

いま私にはやりたいことがたくさんある。メインブランドのkotohayokozawaの他にも、todoという定番アイテムを展開するセカンドライン、再利用品だけを使用したsomebodyという一点もののライン、大きな企業と協業で取り組んで進めているユニセックスのカジュアルウェア“SINK”。すべてが同時進行で動いている。

“楽しいことは、一生懸命やる。”


これが私のたいせつにしていること。
私にとってファッションは自分の内面を可視化するツールのひとつ。これからも創造力を膨らませて、新しいこと、楽しいことがあれば、えいっと一歩を踏み出してみる。

ブランドを立ち上げたあの日みたいに。